「データカタログ作りましょう」「まず、どこに何があるか誰も把握してません」
データ基盤の整備を依頼されて最初にぶつかるのが、この状態です。担当者ごとに自分の部署のデータは把握していても、全社を横断した地図を持っている人はほとんどいません。企業活動を10領域に分解し、それぞれがどんなデータを生み、どのシステムに溜まるかを一枚の地図にします。データカタログを作る前に、まず「そもそもどこにどんな種類のデータがあり得るか」の全体像を持っておくと、登録漏れに気づきやすくなります。
10の領域
リード・商談・契約データ。SFA/CRMが中心システム
キャンペーン・接点・スコアリングデータ。MAツールが中心
注文・出荷・請求データ。基幹システム/ERPが関わる
仕訳・入出金・予実データ。会計システムが中心
採用・評価・勤怠データ。HRISが中心
発注・在庫・サプライヤーデータ
製造実績・開発進捗データ(メーカー/開発組織)
各領域のデータを集約するDWH/BIレイヤー
議事録・ドキュメント・ナレッジベース(横断基盤)
アクセス権限・監査ログ・資産管理(横断基盤)
GTMエンジニアリング視点での重点ポイント
全10領域のうち、部門横断のデータ分断が最も業績に直結しやすいのは1〜4(フロントオフィス〜会計)の連携です。特に「商談が受注に変わった時点で、会計側の請求データと自動的に紐づいているか」は、多くの企業でつまずくポイントです。データカタログを作る際は、まずこの4領域の接続関係から着手すると効果が出やすくなります。
例えば、「営業は商談を受注扱いにしたのに、会計側では入金が確認できるまで売上計上されない」というズレが放置されると、経営会議で見ている売上見込みと実際の入金予定が食い違い続けます。これは領域1(商談)と領域3・4(請求・会計)の連携設計の問題であり、Quote-to-Cash(見積から入金までの一連プロセス)の分断箇所を特定するところから改善が始まります。部門ごとに別々の台帳をつけていて、月末になるまで数字が合わないことに誰も気づかない、というのに近い状態です。
ここで、先に反論しておきます。「10領域も一気に整理するなんて、現実的ではないのでは」という指摘はもっともです。実際、この地図はあくまで「あり得る全体像」を持つための見取り図であり、10領域すべてを同時に着手する必要はありません。重要なのは、着手していない領域を「まだ手をつけていない」と自覚した状態にしておくことで、後から出てくるデータの繋がりに驚かなくて済むようにすることです。
自分で作るデータカタログの項目テンプレート
この地図を自社の実データに落とし込むときは、データ資産1件につき次の項目を1行で登録していくと、「どこに何のデータがあるか」を部門横断で迷わず追える一覧になります。
| システム | データ種類 | 担当部門 | 更新頻度 | アクセス方法 | 保管場所・テーブル名 |
|---|---|---|---|---|---|
| 記入例Salesforce | 記入例商談データ | 記入例営業部 | 記入例リアルタイム | 記入例API連携 | 記入例Opportunityオブジェクト |
全領域を一度に埋めようとせず、まず領域1〜4(フロントオフィス〜会計)から着手し、埋まった行から部門間の接続関係の議論に使う、という進め方が実務的です。
用語ミニリファレンス
- SoR(System of Record)
- 正式な記録の保管場所となる基幹システム
- SoE(System of Engagement)
- 顧客接点で使われるシステム(SFA/MA等)
- ETL / ELT
- 業務系DBから分析基盤へのデータ抽出・変換・格納プロセス
- Reverse ETL
- 分析結果を業務システムへ書き戻す仕組み
よくある質問
- 小規模な会社でも10領域すべてにシステムが必要ですか
- いいえ。この地図は「あり得る領域の見取り図」であり、企業規模・業態によって不要な領域は多くあります。重要なのは、今の会社にどの領域が実在し、どこがExcel・紙などシステム化されていない状態かを最初に棚卸しすることです
- データカタログを作るとき、どの領域から手をつければいいですか
- 一般的には、部門横断のデータ分断が業績に直結しやすい領域1〜4(フロントオフィス〜会計)から着手すると効果が出やすいとされています。特に商談が受注・請求・入金へとつながる接続関係の可視化が優先度が高いです
- SoRとSoEはどちらか一方だけあれば十分ですか
- 役割が異なるため、両方が必要になる場面が一般的です。SoE(CRM/MA等)は顧客接点でのスピードと使いやすさを優先し、SoR(会計・基幹システム等)は正確性・監査性を優先します。どちらを正(Source of Truth)とするかを項目ごとに決めておくことが重要です
問い
自社の10領域のうち、「このデータはどこに、誰の管理下にあるか」を即答できない領域はいくつありますか。答えられない領域の数だけ、部門をまたいだ判断が起きたときに驚きが待っているかもしれません。