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「うちもPLGでいきましょう」「本当にそれで売れますか」

流行りのモーション名だけが先に決まり、ACVも製品の複雑さも検討されないまま進むプロジェクトを、これまで何度も見かけてきました。GTM戦略の実行局面では、「どう届け、どう売るか」を決める前に、まずその会社のプロダクトと単価がどのモーションに向いているかを確認する必要があります。

GTMモーションの5類型

PLG

プロダクト自体が獲得・転換・拡大を駆動する(例:Slack, Notion)

SLG

営業主導。高単価・エンタープライズ向け

MLG

コンテンツ・広告でリードを創出し、インサイド営業へつなぐ

CLG

コミュニティが獲得・定着を駆動する

Partner-Led

代理店・SIer・マーケットプレイス経由で届ける

選定の基本則は「ACV(年間契約額)と製品複雑性のマトリクス」です。

ACV:高ACV:低
製品:単純
製品:複雑
SLG寄り

ACV高・製品単純。営業主導だが説明コストは低め

SLG

ACV高・製品複雑。エンタープライズ営業が適する

PLG

ACV低・製品単純。セルフサーブで拡大しやすい

PLG+補助

ACV低・製品複雑。プロダクト主導+オンボーディング支援を組み合わせる

多くの企業は単一モーションではなく複数を組み合わせます(例:PLGで入口を作り、一定規模の商談はSLGで営業が引き取る)。

ここで先に反論しておきます。「PLGが今のトレンドなのだから、うちも合わせるべきでは」と思うかもしれません。ですが、モーションの選定は流行ではなくACVと製品複雑性という2変数から逆算するものです。靴のサイズを測らずに人気モデルを買うようなもので、履き心地(実際の売れ行き)は結局サイズが合っているかどうかで決まります。

商談メソドロジー(セールスプロセス手法)

  • BANT:Budget/Authority/Need/Timeline。リード資格判定の古典
  • MEDDIC/MEDDPICC:Metrics/Economic Buyer/Decision Criteria/Decision Process/Identify Pain/Champion(+Paper Process/Competition)。エンタープライズ商談の精査基準
  • SPIN:状況→問題→示唆→解決の質問順序で潜在ニーズを顕在化させる
  • チャレンジャーセール:教える→カスタマイズ→主導権を握る、示唆型営業
  • ソリューションセリング:課題起点の提案営業

これらはSFA(Salesforce等)の商談ステージ・必須項目の設計に直結します。

営業生産性を測る方程式

セールスベロシティ方程式
売上速度 =(商談数 × 平均単価 × 勝率)÷ 商談サイクル日数。改善レバーをこの4変数のどれかに特定して施策を絞る。SFAデータを使った営業ボトルネックの診断や、ダッシュボード設計の土台になる
パイプラインカバレッジ
目標に対するパイプライン総額の倍率(3〜4倍が通説)を維持する管理法。フォーキャストカテゴリ(Commit/Best Case/Pipeline)による確度管理とセットで使う

Land and Expand とテリトリー設計

Land and Expandは、小さく入って(Land)社内で拡大する(Expand)戦略です。部門導入から全社展開へ拡大するエンタープライズSaaSの定番であり、NRR向上施策の中核になります。あわせて、担当地域・アカウントの割当設計(テリトリープランニング)と、必要営業人数の逆算(目標÷1人あたりクォータ、ランプアップ期間・離職率を織り込む)は、営業組織のスケール計画に使われます。

例えば、単価の低いセルフサーブプロダクトに高コストなフィールドセールスを組み合わせると、CAC回収が成り立たなくなります。ACV(年間契約額)と製品複雑性のマトリクスに立ち返り、モーションと営業体制の組み合わせがズレていないかを定期的に見直す必要があります。

よくある質問

PLGとSLGはどちらか一方を選ぶべきですか
多くの企業は単一モーションではなく組み合わせを採用しています。例えば、PLGで低単価の入口を作り、利用状況から拡大余地が見えた一定規模の商談だけをSLGで営業が引き取る、というハイブリッド運用がよく見られます
パイプラインカバレッジは何倍が目安ですか
目標に対して3〜4倍のパイプライン総額を維持するのが一つの通説とされています。ただし勝率・商談サイクルによって適正倍率は変わるため、自社のセールスベロシティ方程式(商談数×平均単価×勝率÷商談サイクル日数)の実績値から逆算するのが実務的です
MEDDPICCはすべての商談で使うべきですか
一般的にはエンタープライズ・高単価の複雑な商談で精査基準として使われます。単価が低く商談サイクルが短いモーション(PLG寄り)では、全項目をフルに運用するとかえって営業のオーバーヘッドになるため、簡略化した項目セットで運用されることが多いです

問い

今のGTMモーションは、自社のACVと製品複雑性のマトリクスに照らして選んだものでしょうか。それとも、競合や業界のトレンドを見て「なんとなく」選んだものでしょうか。後者だとしたら、うまくいかない原因を営業やマーケの実行力に求める前に、モーションそのものの見直しが必要かもしれません。

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