専任担当を採用すべきか、外部の実務者に頼むべきか
Salesforce・HubSpotを入れたものの、設計・運用を任せられる専任担当がいない。この悩みに対する答えは「採用する」の一択ではありません。採用市場の実態を踏まえると、むしろ多くの会社にとって外部活用の方が合理的な時期があります。
採用市場は急拡大しているが、日本にはまだほとんど存在しない
海外では、CRM・データ・AIを組み合わせて売上創出の仕組みそのものを設計する「GTMエンジニア」という職種の求人が、2025年から2026年にかけて前年比+205%というペースで急増しています。年収レンジは日本円換算で1,900万〜2,400万円規模、AIエージェント運用スキルを持つ層はさらに給与プレミアムが乗るとされています。
一方で日本では、この職種名そのものの求人がまだほとんど存在しません。実質的に同じ業務は「RevOps」「営業企画」「Sales Ops」といった職種名で募集されていますが、その中でも「マネジメント責任を求めない、実務専任」のポジションはまだ少数派です。つまり、採用しようにも「採用する市場」自体がまだ日本には十分に育っていないのが実態です。
正社員採用のコスト構造
専任担当を正社員採用する場合、求人票の作成から内定承諾まで数ヶ月、オンボーディングから独り立ちまでさらに数ヶ月かかります。加えて、CRM設計・運用の実務者は市場に少なく、採用してもミスマッチのリスクが残ります。人件費は固定費として毎月計上され、業務量が波打っても縮小できません。
そしてこの職種は、多くの会社にとって「常に専任1名分のフルタイム業務」が発生するとは限りません。CRMの初期構築期は稼働が集中しますが、構築が終わり定着した後は、月次のメンテナンスと軽微な改善で足りる会社も多くあります。
外部実務者を使う場合のコスト構造
外部の実務者にスポットで依頼する場合、初期費用は明確で、契約は必要な期間だけに絞れます。採用活動そのもの(求人票作成・面接・オンボーディング)のコストもかかりません。一方で、契約終了後に業務がブラックボックス化しないよう、引き継ぎ資料・権限設計・運用手順のドキュメント化を、契約の中に明示的に組み込んでおく必要があります。ここを軽視すると、外部活用の最大のリスク——「頼んだ人がいなくなったら誰も分からない」——が現実になります。
判断基準:どちらを選ぶべきか
- 採用が合う会社
- CRM関連の意思決定が恒常的に発生し、他部門との調整も含めて社内に常駐する人材が必要な規模・フェーズにある会社
- 外部活用が合う会社
- CRMの初期構築・立て直しといった「山」がある一方、平常時は専任1名分の稼働が常には発生しない会社。特にCRM導入から日が浅く、専任化のタイミング自体をまだ判断できていない会社
多くの会社にとって現実的なのは、まず外部の実務者でCRMを構築・定着させ、業務量が実際に専任1名分を安定的に超えるようになった時点で、初めて正社員採用を検討する、という順序です。順序を逆にすると、専任担当を採用したもののCRM自体の設計が定まっておらず、担当者が一人で試行錯誤を抱え込む状態になりがちです。
問い
御社がCRMの専任担当を探しているなら、それは「常時専任1名分の業務」が実際に発生しているからでしょうか。それとも、CRMが定着していないことへの不安から、とりあえず人を採用しようとしていないでしょうか。後者であれば、採用よりも先にやるべきことがあります。