「AIに任せたら、それっぽいけど使えないものが返ってきました」
AIに「営業を効率化するアイデアを出して」と頼むと、それらしい一覧が一瞬で返ってきます。ところが、どれも自社には当てはまらない。AIの能力が足りないのではなく、頼み方が大きすぎ、渡した文脈が少なすぎることがほとんどです。AIに仕事を任せるときの基本、何を任せ、どう頼むかを整理します。
シリーズ「AIへの仕事の任せ方」1/3本目 ・ 次:設計編
全体像:優秀で速いが、会社のことを何も知らないアシスタント
AIは、とても優秀で、とても速くて、でも会社のことを何も知らないアシスタントです。そう考えると、決めるべきことは4つに整理できます。何を頼むか(委任の単位)、どう頼むか(指示と文脈)、どこまで任せるか(承認と権限)、出来をどう確かめるか(評価)。この記事では前の2つを、設計編で後の2つを扱います。
委任の単位:仕事を、確かめられる大きさに切る
新人に「売上を上げておいて」と頼んでも、何をすればいいかわかりません。「この10社に、この資料を添えて、来週の打ち合わせを打診するメールの下書きをつくって」なら動けます。AIも同じで、1つの仕事に、1つの成果物と、その良し悪しの基準を決めます。
- 「営業を効率化して」
- →「商談メモから、次のアクションと期日を抜き出して」
- 「市場を調べて」
- →「この5社の価格表を集め、同じ形式の表にして」
- 「提案書を書いて」
- →「このヒアリングメモから、課題と提案の対応表を下書きして」
大きな仕事は段階に分け、段階ごとに確かめます。途中の判断をすべてAIに任せると、どこで間違えたのかがわからなくなります。
任せてよい仕事:戻せる・繰り返す・基準がある・量が多い
料理の手伝いを頼むとき、野菜を洗うのは任せられても、味付けの最終判断は自分でします。任せやすい仕事には、4つの特徴があります。
- 取り返し
- 間違えても戻せる(下書き、社内の資料)ものから。顧客への送信・削除・契約など戻せないものは、AIは下書きまで
- 頻度
- 何度も繰り返すもの。一度きりの仕事に仕組みをつくると、手間のほうが大きい
- 基準
- 良し悪しの基準がはっきりしているもの。暗黙の文脈が要る判断は後回し
- 量
- 量が多く、人がやると疲れるもの
ここで先に反論しておきます。「一番大変な仕事から任せたほうが効果が大きい」と思うかもしれません。ですが、戻せない仕事で1回間違えると、AIへの信頼そのものが失われ、活用が止まります。4つとも「任せやすい」側の仕事から始め、信頼を積み上げるほうが、結果的に早く広がります。
指示と文脈:頼み方の質が、出来の上限を決める
「いい感じにまとめて」と「経営会議向けに、結論を先に、1枚で、数字は前年同月比で」では、まったく違うものが返ってきます。毎回の指示には、次の4つを入れます。
- 目的
- 何のための仕事か、誰が読むか
- 形
- 長さ、構成、形式
- 基準
- 何を優先し、何を避けるか
- 例
- 良い出来の見本
そして、繰り返し使う文脈(用語の意味、守るべきルール、過去の経緯)は、毎回口頭で伝えず、ファイルにして置きます。文脈は階層にします。常に読ませる全体のルールは短く、領域ごとのルールや手順は、必要なときだけ読ませます。全部を一度に渡すと、肝心なことが埋もれます。
自己診断
- AIに頼んでいる仕事は、1つの成果物と良し悪しの基準を持っていますか?
- 持っていなければ、出来を確かめられない
- 最初にAIに任せた仕事は、間違えても戻せる仕事でしたか?
- 戻せない仕事なら、まず下書きまでに留める
- 毎回の指示に、目的・形・基準・例が入っていますか?
- 入っていなければ、出来が日によってぶれる
- 繰り返し使うルールや用語の説明は、ファイルになっていますか?
- なっていなければ、伝え漏れが起きる
シリーズ:AIへの仕事の任せ方
- 1.基本編:何を任せ、どう指示するか(この記事)
- 2.設計編:道具・承認・評価・失敗
- 3.運用編:分担・記録・防御
6つのシリーズの全体像は仕組みの設計:6つの要素にまとめています。
問い
最近AIに頼んで、期待外れだった仕事を1つ思い出してください。それを、目的・形・基準・例を添えて、半分の大きさに切って頼み直したら、何が返ってくるでしょうか。