「ツールはたくさん入れたのに、結局どこを見ればいいかわからないんです」
SFA、MA、BI、スプレッドシート、チャットツール。部署ごとに便利なものを入れていったら、同じ情報が複数の場所にあり、どれが最新かわからなくなった。ツールの失敗の多くは、機能の不足ではなく、最初の3つの決めごと、役割・選定・標準かカスタムかで防げます。
シリーズ「ツールと構成の設計」1/3本目 ・ 次:設定編
全体像:家の部屋の役割を決める
家は、部屋ごとに役割を決めておくと片づきます。台所で寝始めたら、片づきません。ツールも同じで、先に役割を決め、家具を選び、置き方を決め、定期的に片づけます。データやプロセスの合意が先にあり、ツールはその合意を載せる「器」です。
- 役割の分担
- 何を、どのツールで担うか。同じ仕事を2か所に置いていないか(この記事)
- 足りる最小
- 標準の機能で足りるか。足すたびに保守が増えることを承知しているか(この記事・設定編)
- 片づけられる
- 変更の流れ、棚卸し、乗り換えの出口があるか(運用編)
役割の分担:記録・実行・分析に分ける
営業の仕組みのツールは、大きく3つの役割に分けると整理できます。
- 記録
- 顧客・商談・活動の正しい記録を持つ。SFA/CRM
- 実行
- 見込み客へ働きかける、通知する、自動で動かす。MA、メール・架電ツール、Slack、iPaaS
- 分析
- 集めて、集計して、読む。分析基盤(DWH)、BIツール
壊れ方は決まっています。同じ機能を複数のツールが持つ(商談の状況がSFAにもスプレッドシートにもある)、部署ごとにツールが増える、役割を超えた使い方をする(SFAに分析の集計を詰め込んで重くなる)。打ち手は、ツールごとの役割を1行で書くことと、「1つの仕事は1か所」を原則にすることです。「このツールは何のためにあるか」に答えられないものは、重複か不要を疑います。
選定:機能の多さではなく、運用できるかで選ぶ
家具は、デザインや値段だけで選ぶと部屋に入りません。先に部屋の広さと使い方を測ります。ツールも、機能の一覧表を比べる前に、自社の運用で必要な要件を決めます。
- 必須(Must)
- ないと業務が回らないもの。ステージ管理、権限の分け方、既存システムとの連携など。3〜5個に絞る
- あれば良い(Want)
- あると楽になるもの。画面の見た目、分析の自動化など
- 運用の条件
- 入れたあとに続けられるか。管理できる人、費用、サポート
ここで先に反論しておきます。「機能が多いツールのほうが、あとで困らないのではないか」と思うかもしれません。ですが、使わない機能に費用を払い、必要な機能の設定は難しくなります。導入費だけで比べず、ライセンス・初期設定・運用の人件費・アドオンを、3年分の総額で見ます。そして、そのツールを管理する人を、選定の時点で決めます。管理者がいないなら、シンプルなものを選びます。
標準かカスタムか:標準で足りるなら、足さない
洋服は、既製品で足りるなら買えばよく、仕立てるほど、直すときに手間と費用がかかります。ツールも、足すたびに保守が増えます。
- 標準機能
- そのまま使う。ベンダーが保守するので軽い
- 設定
- 項目・画面・ルールを、画面の操作で変える。軽〜中
- ローコード
- フローや自動化ツールで処理を組む。作った人が必要
- コード
- プログラムを書く。開発者が必要で、最も重い
標準→設定→ローコード→コードの順に検討し、一段上げるときは、なぜ下の段で足りないかを書き残します。カスタムには持ち主と説明書をつけます。現場の要望をそのまま全部作ると、カスタムが積み上がり、誰も全体を把握できません。要望は、業務のやり方を標準に寄せることで解決できないかを、先に考えます。
自己診断
- 使っているツールを、役割とあわせて言えますか?
- 言えなければ、機能の重複や、使われていないものがある
- 同じ情報を、2つ以上のツールに手で入れていませんか?
- 入れていれば、正しい値がわからなくなる
- 選んだ理由を、「必須の要件」で説明できますか?
- できなければ、機能の多さや評判で選んだ可能性がある
- カスタムのうち、標準で代替できるものはありませんか?
- あれば、保守を減らせる
よくある質問
- SFAは、SalesforceとHubSpotのどちらを選べばよいですか
- 先に必須の要件を決め、それを満たし、運用できるほうを選びます。機能の比較は目的ではありません。構築の範囲とフェーズの考え方はSalesforce導入のスコープ設計でも扱っています
シリーズ:ツールと構成の設計
- 1.基本編:役割分担・選定・標準かカスタムか(この記事)
- 2.設定編:項目・入力体験・権限・自動化の置き場所
- 3.運用編:環境と変更・棚卸し・費用と出口
問い
使っているツールを全部書き出してみてください。それぞれの役割を、1行で言えるでしょうか。言えないものは、重複か、誰も管理していないツールかもしれません。
この記事は、営業の仕組みを8つの要素で整理したナレッジベースの一部です。全体像は仕組みの設計:8つの要素にまとめています。自社の状態は仕組みの自己診断(40問・登録不要)で確かめられます。