「今月は勝率が40%に上がりました」「それ、何件中の何件ですか?」
勝率が先月の30%から40%に上がった。新しいトークが効いたのかもしれません。でも、それが10件中の4件なら、1件増えただけです。翌月に30%へ戻っても、何も不思議ではありません。数字を信じて判断する前に確かめるべき、測り方の基本を3つ整理します。
シリーズ「営業の数字の「測り方」と「因果」」1/3本目 ・ 次:落とし穴編
全体像:体重計に乗る前に確かめること
測るもの:判断に使わない数字は、測らない
健康診断の項目は、何かを判断するためにあります。判断に使わない項目を毎年測っても、手間が増えるだけです。営業の数字も、「この数字が動いたら何をするか」が書けない数字は、ダッシュボードを埋めるだけになります。
- 先に動く数字(先行指標)
- 商談の作成数、初回の打ち合わせ数、引き継ぎから初回連絡までの時間。結果より先に変わり、手を打てる
- 後から出る数字(遅行指標)
- 受注額、勝率。結果そのもので、変わったときには手遅れのことが多い
先行と遅行をセットにし、1つの会議で見る数字は5〜7個までに絞ります。ただし、先行指標が本当に結果に効いているかは、別に確かめる必要があります。活動件数を増やしても受注が増えない、ということはよく起きます。
比べる相手:何と比べるかで、同じ数字が良くも悪くもなる
「今月の商談は120件でした」だけでは、多いのか少ないのかわかりません。数字は何かと比べて初めて意味を持ちます。そして、比べる相手を変えるだけで、同じ数字が「良い」にも「悪い」にもなります。
- 先月と比べる
- 季節や営業日数の違いが混ざる。祝日の多い月に「減った」と騒がないよう、1営業日あたりにそろえる
- 去年の同じ月と比べる
- 1年で市場や体制が変わっている
- 目標と比べる
- 目標の立て方しだいで評価が変わる
- 施策を当てなかったグループと比べる
- 因果に一番近い比べ方。実験編で扱う
一番よくある落とし穴は、都合のいい相手を選ぶことです。先月より悪い月は去年比で、去年より悪い月は先月比で報告する。比べる相手を選べるなら、どんな数字でも良く見せられます。だから、比べる相手は先に決めて固定し、「120件(前年同月比−8%)」のように必ず書き添えます。
ばらつき:小さい数の上下に、物語をつけない
コインを10回投げて7回表が出ても、そのコインが偏っているとは言えません。偶然でもよく起きます。でも1,000回投げて700回なら、さすがに偏っています。数が小さいと、偶然の上下が大きくなります。
- 月に10件の商談が終わるチーム
- 勝率は偶然だけで10〜20ポイント程度、簡単に上下する
- 月に200件の商談が終わる部門
- 偶然の上下は数ポイント程度に収まる
ここで先に反論しておきます。「それでも上がったものは上がったのだから、喜んでいいのでは」と思うかもしれません。ですが、偶然の上下に「新しいトークが効いた」と物語をつけると、翌月下がったときに、効いていたはずのトークをやめてしまいます。偶然で判断が振り回されることのほうが問題です。
- 普段の上下の幅を知る
- 過去12か月の数字を並べ、毎月どれくらい動くかを見る。その幅を超えたときだけ「変化」と呼ぶ
- 数が小さいときは、期間を長くまとめる
- 月次ではなく四半期で見る
- 件数を必ず一緒に書く
- 「勝率40%(4/10件)」のように
自己診断
- ダッシュボードの数字のうち、動いたときに何をするか決まっているものはいくつありますか?
- 少なければ、判断に使わない数字が並んでいる
- 報告のたびに、比べる相手が変わっていませんか?
- 変わっていれば、都合のいい比較になっている可能性がある
- 勝率や転換率を、何件中の何件かと一緒に報告していますか?
- していなければ、偶然の上下と変化の区別がつかない
- その数字が普段どれくらい上下するかを知っていますか?
- 知らなければ、どこからが本当の変化かわからない
シリーズ:営業の数字の「測り方」と「因果」
- 1.基本編:何を、何と比べて、どれくらいの差なら意味があるか(この記事)
- 2.落とし穴編:構成・選択・相関のわな
- 3.実験編:効いたかどうかを確かめる
6つのシリーズの全体像は仕組みの設計:6つの要素にまとめています。
問い
直近の会議で「改善した」と報告された数字を、1つ思い出してください。それは何と比べて、何件中の何件で、普段の上下の幅を超えていたでしょうか。3つとも答えられたなら、その改善はたぶん本物です。