「部長がSFAを見ていないので、誰も入力しないんです」
営業担当にはSFAへの入力を求めるのに、部長は会議でExcelの集計表を見ている。そうなると、現場は「上が使っていないなら、やらなくていい」と受け取ります。研修は導入時に1回だけで、わからないことを聞ける場所もない。仕組みを人の中に根づかせるための3つの論点を整理します。
シリーズ「仕組みの定着と変革」2/3本目 ・ 次:継続編
推進役:上から先に使い、現場の推進役を立てる
クラスで新しいルールを広めるとき、先生が言うより、クラスで人気のある生徒が実践しているほうが早く広まります。そして、先生自身がルールを守っていなければ、誰も守りません。
- 経営・管理職
- 自分が先に使う。会議をSFAの画面で進め、SFAにない数字は扱わない
- 現場の推進役
- 現場で使い方を広め、困りごとを拾って伝える。各チームに1人ずつ、複数人置く
- 抵抗している人
- 改善の相談相手になってもらう
推進役が1人だけだと、その人が異動した瞬間に定着が止まります。そして、推進役の時間は正式に確保します。本業の上に推進の仕事が乗るだけだと、推進役は疲れて離れていきます。
仕事の流れ:使わないと仕事が回らない形にする
歯磨きが続くのは、意志が強いからではなく、朝起きたら顔を洗って歯を磨くという流れに組み込まれているからです。新しい仕組みも、意志に頼らず、使わないと仕事が回らない形に組み込みます。
- 会議
- 営業会議はSFAの画面で進める。SFAにない商談は話さない
- 予測と報告
- 週次の予測は、SFAの数字だけで提出する
- 次の仕事のきっかけ
- SFAで受注にすると、CSへの引き継ぎが自動で始まる
ここで先に反論しておきます。「移行期間は、ExcelとSFAを並行して使えば安心だ」と思うかもしれません。ですが、並行期間が長引くと二重管理で手間が倍になり、少しでも面倒なことがあると慣れたExcelに戻ります。並行期間は短く区切り、古い集計表を廃止する日を先に決めておきます。
支援:マニュアルより、つまずいた瞬間の助け
自転車の乗り方は、説明書を読んでも乗れるようになりません。転びそうになった瞬間に、後ろで支えてくれる人がいると乗れるようになります。
- 画面の中の案内
- 入力画面に、その場で何を入れるかの説明を出す。分厚いマニュアルは誰も読まない
- すぐ聞ける場所
- チャットの質問用チャンネルや推進役への相談。質問しにくいと、自己流で使われ、データがばらつく
- 短い手順
- よくある操作だけを、1分の動画や1枚の手順に
- よく出る質問から直す
- 質問を集めて、画面の案内や手順そのものを直す
自己診断
- 管理職は、新しい仕組みを自分で使っていますか?
- 使っていなければ、現場も使わない
- 現場の推進役は何人いて、その時間は確保されていますか?
- 1人だけ、時間なしなら、定着は続かない
- 新しい仕組みを使わなくても、仕事は回りますか?
- 回るなら、仕事の流れに組み込まれていない
- 使い方がわからないとき、どこで誰に聞けますか?
- 答えられなければ、自己流の使い方が広がっている
シリーズ:仕組みの定着と変革
- 1.基本編:定着とは何か、なぜ抵抗が起きるか
- 2.巻き込み編:推進役・仕事の流れ・支援(この記事)
- 3.継続編:測る・揺り戻しに備える・変わり続ける
6つのシリーズの全体像は仕組みの設計:6つの要素にまとめています。
問い
次の営業会議で、SFAの画面を開いて、SFAに入っている商談だけで話を進めてみてください。会議が成り立たないなら、変えるべきなのは現場の入力ではなく、会議の進め方のほうかもしれません。