「項目は増える一方で、入力は減る一方です。何がおかしいんでしょうか」
現場の要望に応えて項目を足していったら、画面が項目だらけになり、誰も入力しなくなった。誰でも全顧客を見られる状態で、退職者のアカウントも残っている。自動化を足すたびに、値が上書きされる。設定の失敗は、足すときに「何のために」を聞かないことから始まります。
シリーズ「ツールと構成の設計」2/3本目 ・ 次:運用編
項目:1つの項目に、1つの意味を持たせる
引き出しにラベルを貼らずに物を入れると、あとで探せません。項目も、1つの意味に1つの名前をつけ、決めごとをそろえます。
- 1項目1意味
- 「連絡先」に電話とメールを混ぜず、分ける
- 型
- 自由入力か、選択肢か、数値か、日付か。集計に使うものは選択式にする
- 必須
- いつ必須にするか。作成時ではなく、ステージ移行時に絞る
- 名前の規則
- 接頭辞などをそろえる。選択肢を勝手に増やさない
壊れ方は、項目が際限なく増える、似た項目が複数ある(失注理由が3つある)、自由入力の表記ゆれ、選択肢の「その他」が最多になる、です。打ち手は、新しい項目を作る前に「誰が、いつ、何のために入力し、何に使うか」を答えさせることです。答えられない項目は作りません。項目の辞書(名前、意味、型、入力者、使い道、オーナー)をつくります。
入力体験:入力の負担を、現場の目線で測る
使いにくい申込書は、書く前に諦めたくなります。入力画面も、負担が大きいと入力されなくなります。プロセスの出口条件を、入力規則として実装する場所でもあります。
- 項目の出し分け
- ステージや役割に合った項目だけを見せる
- 必須項目
- 次に進むために本当に要るものだけ。増やしすぎると、適当な値で埋められる
- 自動入力
- 入力済みの情報や外部情報から自動で埋める。入力を減らすことが、データの質を上げる最短の道
入力規則が現場の実態に合っていないと、回避するために別のスプレッドシートが生まれます。商談1件の登録・更新に何分かかっているかを、実際に測ります。
権限:必要な人に、必要な範囲だけを渡す
家の鍵は、家族には全部の部屋を、宅配業者には玄関だけを渡します。権限も、最小から始めます。
- 最小の権限から始める
- 足すときは、理由と期限を残す
- 異動・退職の手順に入れる
- アカウントと権限の変更を、人事の手続きと連動させる
- 管理者権限は絞る
- 2〜3人にし、日常の作業は管理者でないアカウントで行う
- 機密は項目レベルで制限
- 個人情報や単価は、見られる人を理由とともに限る
最初に広い権限を渡すと、誰でも全顧客を見てエクスポートでき、情報漏えいや誤削除のリスクが生まれます。四半期に一度、権限の棚卸しをします。共有モデルの詳細は営業データの運用編にあります。
自動化の置き場所:同じ処理を2か所に置かない
目覚ましをスマホと時計と家族の声で3重にかけると、どれが鳴ったかわからなくなります。自動化も、複数の場所に同じ処理があると、どれが動いたかわかりません。
- SFAの中(フロー・入力規則)
- そのレコードの更新に伴う処理。順番が重なると競合する
- MA
- 見込み客への配信、スコアリング。SFAと同じ項目を更新すると衝突する
- iPaaS・スクリプト
- システムをまたぐ処理。担当が属人化しやすい
- 人
- 判断が要る処理。任せる基準を決める
自動化の一覧表(何を、どこで、いつ、誰が持ち主か)をつくります。1つの項目は、1つの自動化だけが更新するようにします。「人が判断する場所」を先に決めてから自動化します。判断を自動化すると、誤りが広がります。
自己診断
- 半年間一度も入力されていない項目は、いくつありますか?
- あれば、画面を重くし、入力を妨げている
- 商談1件の登録・更新に、何分かかっていますか?
- 測っていなければ、入力の負担を把握できていない
- 退職者のアカウントは、すべて無効になっていますか?
- 残っていれば、使われ続けるリスクがある
- 同じ項目を更新する自動化が、2つ以上ありませんか?
- あれば、値が上書きされ、原因が追えなくなる
シリーズ:ツールと構成の設計
- 1.基本編:役割分担・選定・標準かカスタムか
- 2.設定編:項目・入力体験・権限・自動化の置き場所(この記事)
- 3.運用編:環境と変更・棚卸し・費用と出口
問い
いま使っている画面の項目を、1つ選んでください。その項目を、誰が、いつ、何のために入力し、何に使っているか、答えられるでしょうか。答えられない項目は、減らす候補です。
この記事は、営業の仕組みを8つの要素で整理したナレッジベースの一部です。全体像は仕組みの設計:8つの要素にまとめています。自社の状態は仕組みの自己診断(40問・登録不要)で確かめられます。