「自動化したら、間違いが速く大量に起きるようになりました」
手作業を減らそうとフローを組んだら、誤った割り当てが一晩で数百件。商談の数を目標にしたら、質の低い商談ばかり増えた。プロセス図はあるが、SFAのどこに当たるのか誰もわからない。プロセスを設計したあと、それを動かし、測り、直し続けるための4つの論点を整理します。
シリーズ「営業の業務プロセス設計」3/3本目
自動化と人の境界:判断は人に、転記は仕組みに
食洗機は皿を洗ってくれますが、「この皿は手洗いが必要か」は人が決めます。自動化で大事なのは、何を機械に任せ、何を人に残すかの線引きです。
- 仕組みに向いている
- 転記、通知、割り当て、期限の監視。毎回同じ手順で、間違えても戻せるもの
- 人に向いている
- 残すかどうかの判断、顧客への言葉、例外の判断。毎回状況が違い、間違えると戻せないもの
そして、先にプロセスを直してから自動化します。壊れたプロセスを自動化すると、間違った手順が速く大量に実行されるだけです。どのフローが何をしていて、誰が直すのかの一覧も持っておきます。
測定:量・速さ・質を、セットで見る
健康診断で体重だけを見て減量すると、筋肉が落ちて体を壊すことがあります。プロセスも、1つの数字だけを見ると、ほかが壊れます。
- 量
- 商談の数、引き継ぎの件数。これだけを追うと、質の低い案件が増える
- 速さ
- ステージの滞在日数、引き継ぎから最初の連絡までの時間。これだけを追うと、確認を飛ばして急ぐ
- 質
- 転換率、差し戻し率、失注理由。これだけを追うと、慎重になりすぎて量が減る
部門の中の数字が良いのに全体が遅いときは、部門と部門のあいだ(引き継ぎ)を測っていないことが多くあります。引き継ぎからの経過時間と差し戻し率も、プロセスの指標に入れます。
標準化と改善:標準は、改善の出発点
レシピは毎回同じ味を出すための標準ですが、一度決めたら二度と変えない店は、やがて客に飽きられます。営業のプレイブックも、縛りではなく、改善のための出発点です。標準がなければ、何を変えたら良くなったのかも比べられません。
最初から理想を書かない
月1回、量・速さ・質を並べる
一度に全部変えると、何が効いたかわからない
いつ・何を・なぜ変えたかを残し、翌月に効果を見る
プロセスとデータ:同じものを、2つの方向から見ている
プロセスの「出来事」(ステージが変わった、引き継いだ、承認した)は、データの「出来事の記録」になります。プロセスの「今どこにいるか」はデータの「今の状態」に、プロセスの「誰が」はデータの「担当」になります。だから、プロセスを設計するときは、その出来事がどのデータとして残るかを同時に決めます。データに残らない出来事は、測ることも改善することもできません。
- ステージが変わった
- 商談の履歴、各ステージに到達した日
- ISから営業に引き継いだ
- 引き継いだ日、差し戻しの理由
- 値引きを承認した
- 承認の履歴、定価と実際の単価
- 担当が変わった
- 担当の履歴、受注した時点の所属
それぞれのデータをどう持つかは、営業データの「数え方」シリーズで扱っています。逆に、入力しているのに誰も使っていない項目は、プロセスのどこにも対応していない項目です。棚卸しで消す候補になります。
自己診断
- 自動化されている処理の一覧はありますか?
- なければ、誰も知らないフローが項目の値を変えている
- 量・速さ・質の指標を、それぞれ持っていますか?
- 1つだけなら、ほかが壊れている可能性がある
- 営業の標準の進め方を、最後に更新したのはいつですか?
- 古ければ、誰も読まない手順書になっている
- プロセス図の各ステップは、SFAのどの記録に対応していますか?
- 対応していなければ、そのステップは測れない
よくある質問
- 自動化は、どこから始めるのがよいですか
- 毎回同じ手順で、間違えても戻せる「転記・通知・期限の監視」から始めるのが安全です。中でも、引き継ぎの期限の監視(期限を過ぎたら通知・再割り当て)は、効果が見えやすく、プロセスの境界の問題を直接減らせます
シリーズ:営業の業務プロセス設計
- 1.基本編:単位・ステージ・役割・引き継ぎ
- 2.流れ編:例外・待ち・判断
- 3.運用編:自動化・測定・標準化・データとの対応(この記事)
6つのシリーズの全体像は仕組みの設計:6つの要素にまとめています。
問い
最近自動化した処理を1つ思い浮かべてください。それは、自動化する前に、手順そのものを見直したものだったでしょうか。速く動くようになったのが、正しい手順だったのか、間違った手順だったのかを確かめる価値はあるはずです。